2024年3月1日に行われた性能向上リノベデザインアワード2023の表彰式にて、弊社の応募作品が「特別賞」をいただきました。
歴史ある古民家改修のリノベーション案件が選ばれたこと、とても感激です!
▼詳しくはこちら
『谷地ひな市通り 雛の館の決断』 https://pirenoaward.ykkap.co.jp/entry/2023/215/
今回は、受賞をいただいた作品のご紹介と併せて、性能向上リノベーションの『意義』と『注意点』についてご紹介できればと思います。
築166年古民家で温熱環境のリノベーション!
その家が建てられたのは、ペリー来航から3年後の安政三年。西暦でいえば1856年のこと。 ここまで古い民家の改修は、当社としては初めての経験!地元でも有名な由緒正しい家とあって、プレッシャーもひとしおです。
「玄関入ってすぐ、小屋組み・野地板あらわしの空間はそのままが良い。銅板葺きの屋根も部分張り替えのみで。当時の貴重な細工が多く残る和室もそのままにしてほしい。」などの施主様ご要望により、フルスケルトンによる「まるごと断熱」ではなく「ゾーン断熱」による改修を選択。
昔のつくりをそのまま残したいという箇所も多く、断熱・気密ラインは完璧には確保できないものの、「やれるだけのことはやる」という方針で、断熱改修を含むリノベーションにあたりました。
【性能・施工内容】
・外壁まわりは内外ともにすべて大壁に改修してグラスウール120mmを充填。
・屋内の非断熱空間と接する新設間仕切壁にもグラスウール105mmを充填。
・床断熱は大引間・根太間に合計140mmのグラスウール充填。
・天井断熱はグラスウールブローイング300m。
・外部との境界となる箇所には室内側に防湿気密シートの施工もおこないました。
屋内の非断熱空間とは通常の室内建具1枚で仕切られている箇所が多く、UA値としてはどうしても厳しい評価。完璧な断熱改修とはいきませんでしたが、とはいえそれでも充分な効果の出せた改修工事となりました。築166年の古民家でも、ゾーン断熱でやれるだけのことをやれば現代的な暖かい暮らしは可能であることが実証できました!
今回の改修工事を通して、「これからを暮らす」ための「新しいスタンダードをつくる」ことに、いくらか寄与できたのではないでしょうか。
性能向上リノベーションについて
性能向上リノベデザインアワード2023を開催した「性能向上リノベの会」は、窓サッシ・建材メーカーであるYKKAP社が主催する団体で、当社も加盟しております。
性能向上リノベの会
https://pireno.ykkap.co.jp/
入選したリノベーション事例はYKK AP社から7月に発行される予定の作品集にまとめられる予定です。
他社様の事例も、どれも素晴らしい内容なので、気になる方は購読してみてはいかがでしょうか?
(弊社でも読めますよ!)
既存住宅の性能向上というと「断熱性能」ばかりが注目されがちですが、性能向上リノベの会では「耐震性能」の向上も併せておこなうことが重要であると啓発しています。
せっかく壁を引っぺがして軸組を表して断熱性能を改善させるのだから、その機会にしかできない耐震性能の改善もおこないましょうよ!という趣旨であります。
ただ、今回の『谷地ひな市通り 雛の館の決断』は当時築166年という古民家ということで、耐震性能向上という観点でのアプローチが非常に困難であったため、断熱性能の向上のみを重視して性能向上リノベーションをさせていただきました。
もちろん、そこまで古くないお住まいであれば、断熱性能と併せて耐震性能の向上を一緒におこなうことももちろん可能です。
2000年以前に建てられた住宅の場合、現行の耐震基準よりも緩い基準で建てられています。
せっかく断熱性能を向上させるのであれば、何よりも大事な命を守るため、震度6強~7級の大地震が来ても「倒壊しづらい」というレベルまで耐震性を引き上げていくことをお勧めしたいきたいと思います。
『耐震性向上リノベ』の注意点
誤解のないようにあえてしつこく記載いたしますが、耐震性能向上のリノベでできることは、「倒壊しづらい」というレベルにするのが精いっぱいであると考えます。
あくまで「命だけはなんとか守るぞ!」という考えです。
震度6強~7程度の大地震を被災して、その後も住み続けられるというレベルまで耐震性を引き上げるのは、至難の業です。
色んな理由はありますが、「基礎がどうなっているか分からない」「基礎からやり直すくらいだったら新築した方が費用対効果が大きい」というのが一番になります。
建物は、ただコンクリートでできた基礎の上に載ってさえいれば良いわけでなく、地震力を受けても基礎と上部構造がしっかり緊結されていることが重要です。
建物が建てられた時の基礎の鉄筋等、内部がどのようになっているかも不明で、どの程度アンカーボルトやホールダウン金物で土台がしっかり緊結されているかも分からない状態ですと、いくら上部構造の壁量を増やしたりしても、大地震被災後に「その後も住み続けられる」というレベルに達しているのかどうかは不明。
その点を解決するために基礎工事からやり直すことを考えるのであれば、費用が掛かりすぎて「新築した方が費用対効果が大きい」という結論に至ってしまうわけです。
つまり、「その後も住み続けられる」という耐震性能を得ようとすれば、新築せざるを得ないのが実情。
それでも、今回の当社の築166年の事例ほどではないにしても、「これまで家が歩んできた歴史を消し去り、新たに建物を建て直してしまうのはしのびない」というケースがあるのもまた事実。
そういったケースでは、「断熱性能に焦点を当てて性能向上リノベをおこなう」、「上部構造の耐震性能を強化し、大地震でも『倒壊しづらい』よう性能向上リノベをおこなう」というのは意義のあることだと思いますし、そのようなお考えの施主様に対してはぜひ当社もご協力させていただきたいと考えます!
「性能向上リノベで耐震性能も向上してもらったから、大地震に遭っても住み続けられるぞ!」などといった誤解を与え過信をさせてしまうことだけはないように、しっかりとご説明をしていきたいと思います。
・・・素直に「特別賞を受賞した」ということだけをブログに書けば良いものかもしれませんが、「すごい! うちもリノベしてもらおう!」というお考えを安直に野放図に広めるのは誤りだと考えていますので、あえて当社の考えを述べさせていただきました。
当社白田工務店は、耐震性・断熱性・耐久性など、住まいが存在する限り力を発揮し続けてくれる「高性能な家づくり」をご提案しています。
もちろん「新築」だけではなく、「性能向上リノベ」もご提案可能です。
お客様の場合、「新築」と「性能向上リノベ」のどちらが向いているか、真摯にご相談に乗らせていただきますので、ぜひお気軽にお問い合わせください!