猫と暮らす理想の住まいづくりは、単なる家の建築ではなく、愛猫との快適な日々を築くための重要なステップです。
猫の個性豊かな行動や感情を理解し、安全で居心地の良い空間を設計することは、共に幸せに暮らすための鍵となります。
今回は、猫と人が共に快適に過ごせる住空間づくりのための具体的なポイントを解説します。
これから猫と暮らす家を検討される方の参考になれば幸いです。
猫と暮らす家の設計
猫の行動特性への配慮
猫は高所を好む習性があります。
これは野生時代における習性の1つで、安全確保や狩りのために見晴らしの良い場所へ移動するという本能的な欲求の名残です。
そのため、キャットウォークやキャットタワーなどを設置し、猫が自由に上下運動できる空間を確保することが重要です。
また、猫は隠れ家となる狭い空間も好みます。
これは、休息や安全確保のための本能的な行動です。
ソファの下や家具の隙間など、猫が安心して身を潜められる場所を意図的に設けるのも有効です。
さらに、猫は日光浴を好みます。
窓辺に快適な寝床を用意してあげれば、愛猫は気持ちの良い日光浴を楽しむことができるでしょう。
ただ、猫は体温調整が苦手なため、涼しい場所の確保も大事です。
日当たりの良い場所だけでなく、日陰も用意し、猫が自由に温度調節できる環境を整えることも大切です。
猫の年齢や性格に応じた設計も考慮すると、より快適な空間となります。
シニア猫には段差の少ないスペースを、活発な猫には運動できる広さを確保するなど、ライフステージに合わせた工夫が求められます。
キャットウォークを計画する際は、猫が安心して歩ける幅として最低でも20cm程度、可能であれば猫同士がすれ違える30cm以上を確保すると理想的です。
素材は、猫がジャンプした際に滑りにくいよう、無垢材やカーペット地など、爪が適度にかかるものが好まれます。
リビングの梁(はり)をあえて見せる「あらわし梁」の設計にし、梁の上をキャットウォークとして活用する間取りも人気があります。
隠れ家としては、造作家具(テレビボードや本棚など)の一部を意図的に空洞にしたり、階段下のデッドスペースを活用して猫専用の小部屋を作ったりする工夫も考えられます。
特に多頭飼いの場合は、猫同士が鉢合わせた際に逃げられるよう、通路を行き止まりにせず、複数のルートを確保してあげることがストレス軽減に繋がります。
シニア猫の動線を考える際は、ステップの段差を15cm〜20cm程度と低めに設定したり、スロープを併設したりするなど、足腰への負担を軽減する配慮が重要です。
安全性を高める工夫
猫の安全を守るためには、危険な場所へのアクセスを制限する工夫が必要です。
キッチンは、猫にとって魅力的な場所であると同時に、火傷や誤飲の危険性も高い場所です。
間違ってコンロのスイッチを踏んで火をつけて火事になったという事例もあります。
キッチンへのアクセスを制限するために、ドアや仕切りを設置するなど、物理的なバリアを設けることが効果的です。
また、玄関や窓などの外部への出入り口は、猫の脱走防止対策が不可欠です。
猫が抜け出せないよう、しっかりとした扉や網戸、あるいはペットドアなどを設置し、安全性を確保しましょう。
さらに、猫が誤って食べてしまう危険性のあるものを、猫の届かない場所に収納することも重要です。
有名な食べ物だと、ネギ類やカフェインを含むものは猫にとって有害です。
高い場所や閉鎖された収納スペースなどを活用することで、安全性を高めることができます。
加えて、コンセントやコード類の保護も忘れてはいけません。
猫が噛んで感電しないよう、専用カバーやケーブルボックスを使うことで、事故のリスクを軽減できます。
キッチンの侵入防止策として、完全に空間を遮断するドア以外に、調理中の様子が分かりつつ猫の侵入を防げる「ハーフハイト(腰高)のドア」や、格子状のパーテーションを設置する間取りも選択肢となります。
IHクッキングヒーターは直火がないため安全と思われがちですが、猫がタッチパネル式のスイッチを誤って押してしまうリスクや、調理後の高温部に触れて火傷する危険性も考慮し、チャイルドロック機能の活用やコンロカバーの設置が推奨されます。
玄関からの脱走防止には、玄関土間と廊下・ホールの間にもう一枚扉を設ける「二重扉」の構造が最も効果的です。
また、換気のために開ける窓には、猫が網戸を破ったり開けたりできないよう、専用の脱走防止フェンス(格子)や、一定以上開かないようにするストッパーを取り付けましょう。
室内に置く観葉植物にも注意が必要で、ユリ科やポトス、アイビーなど、猫が口にすると中毒症状を引き起こす植物は多いため、猫にとって安全な植物(キャットニップや猫草など)を選ぶか、手の届かない場所に飾る工夫が求められます。

快適な住空間づくり
1.猫のための空間設計
猫が快適に過ごせる空間設計を実現するには、猫の行動特性を理解することが不可欠です。
猫は自分のテリトリーを明確に認識し、安全でリラックスできる場所を求めます。
そのため、猫が自由に動き回れる広さと、同時に落ち着いて休むことのできる隠れ家のような空間を確保することが重要になります。
また、猫が自由に移動できる動線を確保することも重要です。
キャットウォークやステップなどを設置することで、猫はストレスなく家の中を移動できます。
これにより、猫は自分の好きな場所へ自由に移動し、快適な生活を送ることができます。
壁に設置する棚やステップは、インテリアと調和させることで、部屋全体の雰囲気を損なうことなく猫の快適さを確保できます。
DIYでも対応できるため、工夫次第で多様なレイアウトが可能です。
猫の運動不足解消やストレス軽減のため、垂直方向の動線を意識的に取り入れた間取りが重要です。
例えば、壁に設置したステップから始まり、本棚の上部、ドアの上の欄間(らんま)スペースを経由し、最終的にリビングを見下ろせる梁の上まで移動できるような「回遊動線」を作ると、猫の満足度は格段に上がります。
新築時に造作しなくても、高さの異なる家具(例えば、低いテレビボード、中間の本棚、高いタンス)を意図的に配置し、それ自体をステップとして活用するアイデアもあります。
壁の素材は、猫の爪とぎ対策として非常に重要です。一般的なビニールクロスは爪が引っかかりやすく、すぐにボロボロになってしまうため、腰壁(床から高さ90cm~120cm程度)に傷に強いペット対応クロスや、表面が硬い木材パネル(腰板)を採用する設計がおすすめです。
あるいは、特定の場所に麻やサイザル麻を巻いた「爪とぎ専用の柱」を設け、そこで爪を研ぐようにしつけるのも一つの方法です。
2.人にも猫にも優しい間取り
猫と人が共に快適に暮らすためには、お互いの生活空間を尊重する間取りが重要です。
猫の遊び場や休息場所を確保しつつ、人の生活空間を確保するバランスが求められます。
例えば、リビングの一角に猫専用のスペースを設ける、またはキャットウォークをリビングの天井近くに設置することで、猫は高い場所から周囲を見渡すことができ、人は邪魔されずに生活できます。
掃除のしやすさも重要なポイントです。
猫のトイレの設置場所や、猫の毛が付きにくい素材の選定など、日々の掃除を容易にする工夫は、人にも猫にも快適な生活環境を維持するために必要です。
他にも、他者に対する気遣いも必要です。
特に周りに猫アレルギーの方がいる場合は、外出着に猫の毛をつけないようにするなどの配慮をしましょう。
猫用トイレの臭い対策も、暮らしやすさを大きく左右します。
脱臭機能付きのトイレや、換気の良い場所に設置することで、匂いを最小限に抑えることが可能です。
また、猫用トイレの設置場所は、間取り設計において最も悩ましい点の一つです。
猫が落ち着いて排泄でき、かつ人の生活空間(特にLDK)からニオイが流れてこない場所として、換気扇や窓がある洗面脱衣所、あるいは廊下の突き当りや階段下収納の一部に専用スペースを設けるのが一般的です。
その際、24時間換気システムの排気口をトイレの近くに配置したり、壁に珪藻土やエコカラットなど調湿・消臭効果のある建材を使用したりすると、ニオイ対策に一層効果的です。
掃除のしやすさの観点では、床に物を極力置かなくて済むよう、壁面収納を充実させ、ロボット掃除機がスムーズに走行できる間取り(家具の脚の高さを10cm以上にするなど)が推奨されます。
猫アレルギーのある来客に配慮し、玄関ホールに手洗い場を設けたり、猫が立ち入らない客間や書斎を確保したりする間取りも、人にも猫にも優しい工夫と言えるでしょう。
玄関に、外出着に付いた毛を払うためのエチケットブラシや、来客用のコートを預かるクロークを設けるのも良いアイデアです。

まとめ
猫と暮らす家の設計においては、猫の行動特性への配慮と安全対策が非常に重要です。
高い場所へのアクセス、隠れ家、トイレの位置、キッチンのアクセス制限、脱走防止策などを考慮した設計が必要です。
さらに、猫のための快適な空間設計と、人にも猫にも優しい間取りや設備を心がけることで、猫と人が共に幸せに暮らせる理想的な住まいを実現できます。
猫の習性と安全性を考慮した設計、そして、猫と人の生活空間のバランスを調整することで、より快適な空間を創り出すことができます。
これらの点を意識することで、猫も人も幸せに暮らせる理想の住まいを実現できるでしょう。
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