2024年の年明けは、能登半島地震という最悪な幕開けとなってしまいました。
震源地に近い珠洲市、輪島市などを中心に多数の死者・安否不明者が出ています。
犠牲者の方々のご冥福を心よりお祈りいたします。
災害関連死も出始めております。
一刻も早く二次避難が進み、これ以上犠牲者が増えることがないよう願うばかりです。
倒壊家屋のうち半数が「新耐震基準」の「衝撃」
さて、地震後に珠洲市で現地調査をおこなった研究者によれば、調査した木造家屋約100棟のうち、4割に当たる40棟ほどが全壊していたとのこと。そしてその半数の20棟は、「新耐震基準」後に新築・改築されたとみられるということです。
▼参考記事
「新耐震基準」導入後に新築・改築でも半数の木造家屋が「全壊」に…石川・珠洲の現地調査
世間では「新耐震基準後なのに」と衝撃を受けている声が大きいようですが、いわゆる「新耐震基準」が施行されたのは1981年のこと。その1981年の施行からまったく基準が変わっていないかというとそういうわけではなく、2000年におこなわれた大きな基準改定をはじめ、何度か改良されてきています。
1981年に建てられた建物と2000年代に建てられた建物ではかなり基準が異なっており、実際2000年以降に建てられた建物は軽微な被害で済んでいるということ。
現行の耐震基準で耐震性が全然不足している、というわけではないようですので、そこは少し安心できるポイントでもあります。
いわゆる「新耐震基準」は実ははるか40年も前の基準で、最新の耐震基準である「現行耐震基準」とはかなり違うということは覚えておいていただくのが良いかもしれません。
上記の内容については「構造塾」で有名な佐藤実先生も詳しく説明されていますので、ご興味があればぜひご一読ください。
▼参考記事
「新耐震」なのになぜ全壊? 能登半島地震で木造住宅が深刻な被害を受けた理由
現行耐震基準はあくまで「必要最低限」
とはいえ、「だから現行耐震基準さえ守れば大丈夫、何の心配もない!」というわけではありません。
そもそも現行の耐震基準は、「震度6強~7程度の地震に対して倒壊や崩壊しない」ということしか求めていません。これはつまり、「倒壊や崩壊はしないが、大きな損傷を受けることは許容している」ということ。
「その後に補修をして住み続けられる」ことは求められていないし、震度6強~7程度の揺れ「1回」に対しては確かに命を守ってくれるでしょうけど、その後にまた大きな揺れがあれば倒壊する可能性は高い。
熊本地震の時の益城町のように、震度7の地震が立て続けに発生するようなこともあるわけです。
現行の耐震基準を満たすのは、本当に必要最低限のことでしかありません。
複数回の大地震に耐えてくれて、その後も住み続けられるようにするためには、やはりそれ以上の耐震性能、具体的には耐震等級2や耐震等級3が必要になってくるのは間違いありません。
積雪がなかったことが不幸中の幸い
不幸中の幸い、と言っては叱られるかもしれませんが、1月1日の地震発生時、家屋の屋根に積雪がなかったということも、「この程度」の倒壊件数で済んでくれた理由と言えます。
地震発生が多量の積雪時であった場合、全壊した家屋は4割では済まなかったでしょう。
新耐震基準もしくは現行耐震基準で建てられた家とて、適切な設計積雪量を加味して構造計算がなされた家屋は少なかったでしょうから、より甚大な被害をもたらしていたことは想像に難くありません。
地震は季節を選んでくれません。
何度かこのブログでもお伝えしてきた通り、雪国に家を建てる以上は、適切な設計積雪量を加味して耐震等級2以上、できれば耐震等級3の家づくりをすることが、生命と財産を守るうえで重要な防衛策となると信じています。
今後いつ大地震が山形県で発生するか分かりません。
建築を生業にしている者として、これからも居住者の生命と財産を守れる家づくりをしていくばかりです。
▼積雪に関する過去のブログ記事
「雪の重みで住宅倒壊事故・・・今後は増えていく可能性も」