新築一戸建てを考えるとき、建物と並んで大切なのが「土地選び」です。
同じ家を建てるとしても、土地によってかかる手間・費用の多寡、申請の煩雑さが大きく変わります。
「分譲宅地」「既存宅地」「農地(田畑)」という3つの選択肢にはそれぞれ特徴があり、知識がないまま購入すると、思わぬ出費や工期の遅れにつながることもあります。
例えば、分譲宅地ならインフラが整備されていてすぐに建てられますが、その分価格は高め。
逆に農地なら広い土地を安く購入できますが、「農地転用」という行政手続きを通す必要があり、造成工事や水道引込や下水・浄化槽の設置に費用が必要になります。
この記事では、それぞれの土地の メリット・デメリット、そして 必要な工事や申請の内容 をわかりやすく解説します。
分譲宅地の特徴
分譲宅地とは、不動産会社やハウスメーカーが大きな土地をまとめて宅地用に造成(=家を建てられるように整備)・区画割りし、区画ごとに販売している土地のことです。
最初から「住宅新築用」として整えられているため、購入すればすぐに家づくりをスタートできるのが最大の魅力です。
分譲宅地のメリット
・建築条件が整っている
すでに「宅地」として整備されているため、法的にも建築可能です。市街化調整区域(基本的に新築ができない地域)などの心配もなく、安心して購入できます。
・インフラが整備済み
上下水道(生活用水や排水を通す設備)、電気がすでに引き込まれていることが多いです。新たに配管を引いたり、電柱を設置したりする必要がほとんどありません。
・手続きが簡単
建築前には「建築確認申請(建物が法律に適合しているかを自治体に確認する申請)」が必要ですが、分譲宅地の場合はそれ以外に大きな手続きは不要です。
・同年代の世帯が多く集まる
数区画~数十区画の住宅用地が売りに出され、その多くは子育て世代が取得して新築住宅を建てて住むことになります。
同年代のお子さんたちがいる世帯が多いため、ご近所同士で話が合うことが多いこともメリットのひとつでしょう。
一方で、どんな人が住むことになるのか、事前に探ることも難しい点ではデメリットにも見えるかもしれません。
分譲宅地のデメリット
・価格が割高
土地を造成する費用やインフラ整備費用がすでに価格に含まれているため、他の土地と比べて高めになります。
・区画が制限される
あらかじめ区割りされているため、土地の形や広さを自由に選べないことがあります。隣家との距離が近いケースも多いです。
<必要な工事・申請>
・建築確認申請(必須)
・地盤調査(必要に応じて地盤改良工事)
* 手間をかけずにスムーズに新築したい人には最も安心な選択肢です。

既存宅地(古家付きまたは更地)の特徴
既存宅地とは、既存住宅が建っている土地、もしくは古家が取り壊されて更地になっている土地を指します。市街地や住宅街で見つかることが多く、立地条件が良いことも多いのが大きな魅力です。
既存宅地のメリット
・立地の選択肢が広い
駅近や商業施設の近くなど、生活利便性の高い場所にあるケースが多いです。分譲地ではなかなか出ない好条件の土地が見つかる可能性もあります。
・価格交渉の余地
古家付きの土地の場合、「解体する前提」で価格を下げてもらえるケースもあります。
既存宅地のデメリット
・解体工事の費用が発生
古家を取り壊すには「解体工事」が必要です。建物の規模や構造にもよりますが、数十万〜数百万円の費用がかかります。特に古い木造家屋や鉄筋コンクリート造はコストが高くなりがちです。
・インフラが老朽化している可能性
古い宅地では、水道管やガス管が劣化していることがあります。その場合は「引き直し工事(新しい配管に交換する作業)」が必要です。
・同年代の世帯が近隣にいる可能性はやや低い
分譲地とは異なり、近隣で一斉に同年代の方々が取得する場所ではありませんので、近隣はみんな上の世代ばかり、ということも多々あります。
話が合わないというデメリットはありますが、一方では近隣にどんな方が住んでいるのか事前に探ったうえで土地の購入を検討することができるというメリットもあります。
<必要な工事・申請>
・古家解体工事(古家付きの場合)
・建築確認申請
・場合によっては水道管やガス管の引き直し
*好立地に家を建てたい人に向いていますが、購入前に「解体費用」や「インフラ状況」をしっかり確認することが重要です。

農地転用の特徴
農地はその名の通り農業を行うための土地です。宅地として利用するには、法律に基づいた手続きを経て「宅地」に転用する必要があります。これを「農地転用」と呼びます。
農地転用のメリット
・価格が安い
宅地と比べると圧倒的に安く購入できます。広い土地を手頃な価格で手に入れられるのは農地ならではです。
・広さを確保できる
広大な敷地を手に入れやすく、庭や駐車場を広々と確保できます。家庭菜園や趣味のスペースを取りたい方には魅力的です。
農地転用のデメリット
・農地転用が必要
農地は農業に使うことを前提としているため、そのままでは家を建てられません。農業委員会や自治体に「農地転用申請」を行い、許可を得る必要があります。
手続きには時間がかかりますし、場所や状況によっては転用が認められないこともあります。
・インフラが未整備
水道・ガス・電気が通っていないケースが多く、数十万円単位の引き込み工事が必要になることが多いでしょう。
・造成工事が必要なケースも
農地は柔らかい土壌が多いため、地盤調査の結果次第では地盤改良工事が必要なケースもあります。盛土、地盤改良、排水工事といった造成工事が必要になることは多いでしょう。
<必要な工事・申請>
・農地転用申請(農業委員会・行政の許可)
・宅地造成工事(盛土・地盤改良・排水設備など)
・インフラ整備(上下水道・電気・ガスの引き込み)
・建築確認申請
*広い土地を安く手に入れられる大きな魅力はありますが、手続きや工事のハードルは高めです。余裕のあるスケジュールと予算を確保することが大切です。また、農地転用などの事務的対応は自分で手続するのは大変ですので、行政書士等に依頼するのが良いでしょう。

まとめ:どの土地が一番良いの?
結局のところ、「一番良い土地」は人それぞれの条件によって異なります。
■スムーズに家を建てたいなら
→ 分譲宅地
少し高くても安心・手間なしで新築が進みます。
■立地と価格のバランスを取りたいなら
→ 既存宅地
解体やインフラ工事の費用負担が必要なケースはあるものの、好条件の場所を選べる可能性が高いです。
■広さや自由度を優先したいなら
→ 農地転用
申請や造成工事のハードルは高いですが、広大な敷地を低コストで確保できます。
最終的には 「予算」「立地」「自由度」のどれを優先するか を明確にして選ぶのが失敗しないポイントです。
初めての家づくりで安心を重視するなら 分譲宅地、少し手間をかけても好条件を狙いたいなら 既存宅地、理想の広い敷地にこだわるなら 農地 が向いています。