長い間、日本の住宅において断熱性能は軽んじられてきました。
例えば耐震性能のように構造の安定性・安全性にかかわる性能は、有事の際(大地震など)に人の生き死ににダイレクトに関わるため、性能向上に向けて何度も法改正が行われてきています。それはもちろん正しいことであり、今後もより強化していくべきことです。
しかし断熱性能については、どうしても人の生き死ににダイレクトに関わることではない(間接的には関わると言われているが)ため、後回しにされてきたような印象を受けます。
もうずっと日本は断熱性能に関しては意識の低いままなんだろうな、と思っていた矢先、国交省がすごい資料を示してきました。
2021年11月4日、国交省の「建築物エネルギー消費性能基準等小委員会」にて、「ZEH基準を上回る等級について」検討されていることが判明したのです。
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/kenchikubutsu_energy/014.html
これまでの断熱等性能等級は、最高等級が等級4でしたが、一気に等級7まで創設するというのです。
その前から、等級5としてZEH水準の断熱性能の等級を創設するよというのは下話が出ていたのですが、それ以上の等級創設の可能性が示されたことに驚きを禁じえません。
これまで、国の最高等級4では充分に暖かい家にはならないと考える、断熱性能にこだわりを持つ全国の工務店同志では、HEAT20(http://www.heat20.jp/)の示すG1基準やG2基準を目安にUa値を設定してきていました。
しかし、国の機関ではない一「民間」団体であるHEAT20が示しているだけの基準ということもあり、世間一般的には、
「HEAT20? あの一部の『断熱マニア』の人たちが熱心に主張してるやつでしょ?」
という印象が否めませんでした。
今回の国交省案の等級6、等級7は、その一部の『断熱マニア』であるHEAT20のG2基準、G3基準を参考にしているのですから驚きです。
なんせ国交省はそれまで公的な資料においてHEAT20に触れることは一切なく、まるで存在自体がないかのような扱いをしてきました。その国交省が初めて、HEAT20の断熱基準を自ら提示し、そのG2・G3を念頭においた上位等級の創設を検討し始めたというのです。
「菅前首相が打ち出した『2050年カーボンニュートラル』を達成するんだ!」
という、住宅部門の省エネ推進に対する国交省の物凄い意気込みが伝わってくるようです。
HEAT20の示す断熱性能基準に国のお墨付きが与えられたという見方もできます。これまで断熱性能の向上を目指して日夜努力してきた方々の努力がようやく報われたとも言え、これからも自信をもって高断熱住宅づくりに邁進してきたいものだと思います。