先日の投稿で示した通り、山形市以外の多雪区域では、雪の重さは30N/(㎡・cm)以上として計算することになっています。
「積雪量1cmごとに1㎡につき30N」と言われてもまだピンとこないかと思います。
N(ニュートン)という単位は、日常生活になじみがありませんので、分かりにくいかと思います。精確にいえば違いますが、イメージ的には大体10N≒1kg重くらい。
そうすると、30N/(㎡・cm)とは、「積雪量1cmごとに1㎡につき3kgの重さがかかる」ということが分かります。
積雪量1cmごとに、というのも少なすぎて逆にピンとこないかと思います。
積雪量100cm(1m)で考えてみましょう。
100倍ですので、「積雪量1mでは、1㎡につき300kgの重さがかかる」ということになります。ものすごい重さであることが分かるかと思います。
屋根の水平投影面積が65㎡ほどだと仮定すると、積雪1m時、屋根全体では300kg重/㎡×65㎡=19,500kg重。
なんと19.5トンの雪の重みが載っていることになります。
乗用車(セダン)の重さが約1.5トン前後ですから、それが屋根の上に13台載ったような状態になるわけです。
考えてみれば、雪ってそれくらいの重さがあってもおかしくありません。
1㎡の広さに1mの高さの水が集まれば1㎥の水となり、1㎥の水は1,000kg(=1トン)の重さになるのです。
時間がたって雪が自重で締め固まってくれば、水の3割くらいの重さになっても全然おかしくはありません。
ということで、雪が積もればとんでもない重さになるんだということが理解いただけたかと思います。
という内容でおしまいにしたいところですが、先日の投稿で、新庄市の住宅が雪の重みで倒壊したというニュースをご紹介しました。
そちらのニュースでは、湿った雪がどれくらいの重さになっていたのかということも紹介されていますので、改めてニュース記事の画像を貼らせていただきます。
これは初めて知ったのですが、雪氷防災研究センターによれば、湿った雪は1㎥あたり約500kgになるということです。
つまりは積雪の単位荷重がおよそ50N/(㎡・cm)ということであり、全国基準の単位荷重20N/(㎡・cm)の2.5倍、山形県の多雪区域の単位荷重30N/(㎡・cm)の1.67倍と、ものすごい重さになります。
構造に関しては安全側で基準を決めるべきと思いますが、雪に関しては年中降ってるわけでもないということからか、甘めに想定されているのかもしれません。
それでも、多くの住宅のように仕様規定のみで建てられて積雪荷重を考慮していないという家よりは、積雪の単位荷重30N/(㎡・cm)としてしっかり構造計算をおこなって建てた家の方が、はるかに安全であることに疑いようはありません。
積雪荷重を甘く見てはいけません。
雪下ろしできなくなった時にこそ、積雪荷重の怖さが分かってくるのだと思います。