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2024.10.02

コラム

建築基準法

建築業界の2025年問題? 4号特例の縮小の概要とその影響について

以前から建築業界で話題にあがっていたいわゆる「2025年問題」。
すでに対応済みの工務店さんが多いと思っていましたが、最近になってようやく県内の中小工務店の中でも危機感を覚えたり、勉強し始めたり、という動きが出てきたように見えます。

その中でも「4号特例の縮小」については当社では数年前にすでに対応完了済みで、現在はその先を見据えて動いているところですが、先日「4号特例の縮小」についてのセミナーが開催されたため参加してまいりました。
セミナー内容は非常に分かりやすく、復習として非常にためになる内容ではありましたが、参加された工務店さん方の反応を見ると「初めて聞いた」「結局何をすれば良いのか」というような反応が多かったように思います。

プロである工務店さんたちでさえそのような反応ですから、一般の方々はなおさら「何それ?」な内容かと思います
そこで今回は、今さらではありますが、建築業界の2025年問題とは何か? そしてその中でも「4号特例の縮小」について概要をご紹介し、住宅建築においてどのような影響があるかをさらっとご紹介したいと思います!

木造建築物に関する2025年度からの3つの法改正について

まずは前提のお話です。

2022(令和4)年6月、『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律』(令和4年法律第69号)が公布されました。
この改正法に基づいて様々な法律が改正されることになりました。

この改正法では、2022年度から2025年度まで毎年度少しずつ法改正が施行されていくことになっており、これに基づいてすでに改正済みの法律もあります。

その最後の仕上げとばかりに、2025年度は3つの法律の改正が施行される、というわけです。
その3つの法律のうちの特に2つが、今後の木造建築に多大なインパクトを与える法改正なのです。

概して言うと、建築をおこなう際のルールや求められる性能が厳しくなるという内容が多く、これから家を建てようという一般の方々にとっては「良いこと」が多いです。
(着工までのスケジュールがこれまでより延びたり、建築費が掛かり増ししたり、という点はありますけどね。)

ですが、不勉強な工務店にとってはそれについていくのが大変だ、これは大問題だ、ということで、「建築業界の2025年問題」と呼ばれているわけですね。

2025年度より、木造建築物に関する3つの法律において改正が予定されています。
「2025年度の法改正」という点で共通しているため、これら3つを混同してこんがらがるとわけが分からなくなるため、まずそれらを整理します。

1:建築物省エネ法の改正

2025年4月より、原則すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合を義務付けられることになります。
「適合義務化」が始まるということです。

これまでも、300㎡未満の小規模建築物においては、施主様に対して「説明義務」がありました。
「説明義務」というのもおかしな話ですが、簡単に言えば「これから建てる建築物が省エネ基準に適合しているか適合していないかを説明し、適合していない場合はどうしたら適合できるかを説明する義務」ということです。
この「説明義務」は2021年4月より始まったばかりの制度でして、今も「説明義務」が続いています。

それが2025年4月以降は、「これから建てる建築物を省エネ基準に適合させる義務」がある、ということです。
2021年4月からたった4年後の2025年には「適合義務」に改正されるということになります。

これはどういうことかというと・・・
本当は最初から省エネ基準への「適合義務」を始められれば良かったのですが、いきなり「適合義務」化してしまえば、これまで住宅の断熱性向上にまったく注力してこなかった大多数の町場の工務店が、まったく話についていくことができなくなってしまい、取り残されてしまいます。それではあんまりだから、「激変緩和措置」的なイメージで、とりあえず「説明義務」化しましょう、ということで始まったわけです。

そのクッションを挟んだおかげで?、ようやく2025年4月から省エネ基準の適合義務化が始められるぞ、という段階までこれたわけです。

省エネ基準に適合しない低断熱住宅が多くつくられてきたことにより、住宅の冷暖房費にかかるエネルギーが多くかかり、その電力をつくるために日本は海外から大量の原油・天然ガス等の資源を買い続けて国富を流出させ続けてきてしまいました…
省エネ基準の適合義務化が遅すぎる! と言わざるを得ませんが、やらないよりははるかに良い法改正でしょう。
2025年4月からの適合義務化を経て、その後の適合義務基準の強化までどんどん進めていって、省エネで高性能な家づくりがもっと普及してほしいものです。

2:建築基準法の改正

2025年4月より、建築確認審査の対象となる建築物の規模の見直しが始まります。
これがいわゆる「4号特例の縮小」を指しています。

山形県は冬寒い地域ですので、上述の「省エネ基準適合義務化」についてはよく勉強されて理解している工務店さんも多いイメージがあります。
一方で、こちらの「4号特例の縮小」については、「どういうことかよく分からない」「何をすればいいのか分からない」という工務店さんもまだまだいらっしゃるようです。

この4号特例の縮小については後述で説明いたします。

3:建築士法の改正

2025年4月より、構造規制の合理化・二級建築士の業務範囲の見直しが始まります。

こちらは、一般の施主様にはあまり関係がないかもしれません。
また、平屋や2階建てが多い山形県の工務店さんにも、あまり関係ないなという方が多いかもしれません。

上述の2つの法改正はこれまでよりルールが厳しくなる改正です。
こちらの建築士法の改正については、厳しくなる箇所もある一方で規制緩和される箇所もあります。

大きなところで言えば、
・構造計算しなければならない木造建築物の規模が変わる。
・二級建築士ができる業務範囲が広がる。
といったところです。

2025年から変わる「4号特例」

そもそも「4号特例」とはどんなものかというご説明です。
「建築基準法第6条第1項の第4号」に規定されている建築物に対しての特例措置を指し、以下のような建築物と特例内容となっております。

<4号建築物>※建築士が設計したもの
・木造平屋
・木造2階建ての小規模(500㎡以下)住宅
<特例措置>
・確認申請における構造関係の図書提出が省略できる
・採光や換気設備、建築材料の品質、電気設備、等々の一部項目が審査の対象外となる

この特例は、建築確認申請の手続きにおいて小規模な木造住宅の構造審査の一部を省略することで、手続きが簡素化され、迅速に建築を進められるようにすることを目的として制定されました。
しかし、この「構造関連の審査が省略される」という特例を「構造の検討をしなくても良い」と曲解し、何の構造検討もせずに設計・施工している建築業者さんが出てきてしまって大問題になり、これが「4号特例の弊害」と呼ばれ問題視されています。

これを改善することを1つの理由として、2025年4月からはこの4号特例が見直されます。
下図をご参照ください。

これまでの「4号建造物」という括りがなくなり、「新2号建築物」「新3号建築物」に改正されます
階数2以上または平屋でも200㎡を超える建築物は「新2号建築物」となり、構造関連の審査省略制度の対象外となります。
最低でも「3つの簡易計算」(壁量計算・四分割法・N値計算)の計算図書を提出し、その他新たに設定される説明資料を提出して構造の安全性に関する審査を受ける必要があるほか、省エネに関する審査も必要になります。

注意点としては、「構造計算が義務化される」というわけではない、ということです。
あくまで、「簡易計算でも良いから構造検討資料をちゃんと提出しなさい」というわけです。

最低限の構造審査では、高性能な家を建てられない!

4号特例の縮小後も「構造計算が義務化されるわけではない」と言いましたが、だからといって「構造計算はしなくて良い」「する必要がない」ということではありません
そして、簡易計算(壁量計算・四分割法・N値計算)しか行わない家は耐震等級1の耐震性しか得られません

長期優良住宅の認定基準でもある耐震等級3の高性能な家を建てるためには、簡易計算よりも高度な「性能表示計算」または「構造計算(許容応力度計算)」を行い、認定審査機関に計算書を提出する必要があります。

「性能表示計算」
耐震等級2または3の建築物とするために必要な計算内容で、長期優良住宅や性能評価住宅などの申請にも必要となります。

「構造計算(許容応力度計算)」
耐震等級2または3の建築物とするために必要な計算内容で、構造安全性を確認する全項目を計算で検討するため、最適な部材や施工内容で家の安全性を高めることができます。

どちらの計算方法でも耐震等級2または3の計算書を作成して申請に使用することは可能です。
ですが、当社では横架材の検討や基礎の検討など、性能に関する重要な検討項目をほぼ網羅している構造計算(許容応力度計算)を標準でおこなっています。

そして、どうせ耐震等級3および長期優良住宅認定申請のために構造計算書を作成するのですから、2025年4月以降におこなう確認申請時にも、そちらの構造計算書を添付して審査を受けることになるでしょう。

施主側に影響はあるのか?

今回の法改正によって生じる対応事項は、大部分が施工会社側で実施することなので、施主側で何かをしなければならないということはほぼありません。

一方で、2025年4月以降は確認申請時の審査項目が増えることになりますので、確認済証が交付されまでにかかる時間が大幅に延びることが決まっています。
具体的には、これまでは確認申請提出後7日以内に交付だったものが、2025年4月以降は確認申請提出後35日以内に交付、と、審査期間が大幅に延びてしまうのです。

家の完成引渡しまでにかかる期間が延びることにつながりますので、スケジュールが非常にタイトになります。
ここに様々な補助金の完了報告期限なども関わってきますので、実務者は非常に大変です。
着工まで時間がかかってしまい、希望した日に引渡しを受けることができないうえに、もらえるはずだった補助金がもらえなくなってしまう、という悲劇が多発することでしょう。
そうならないためには、余裕をもったスケジュールで家づくりを進めていくしかないのが現状です。

~~~~~

以上、今回は「建築業界の2025年問題」や、「4号特例の縮小」についてまとめさせていただきました。
これまで最低限の家づくりしかしてこなかった工務店さん方は大変にはなりますが、その分、建てられる家がより安心に、より快適になるはずです。
今後もより安全で長持ちして快適な家が増えていくことを願ってやみません。

弊社では、「家を建てるために、まず何から始めれば良いのか分からない…」という方でも安心して家づくりを進められるように、勉強会などを無料で実施しています!
スケジュールに関わってくる家づくりの工程についてはもちろんのこと、費用の考え方や、家の性能についてなどもお話ししておりますので、興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

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