「建て方(たてかた)」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?
建て方とは、建築における重要な工程のひとつで、あらかじめ加工した木材(や鉄骨)の構造材を現場で組み立て、建物の骨組みを立ち上げる作業を指します。
家づくりにおいては、柱や梁(はり)などの主要な構造部材を組み立てることで建物のかたちが一気に現れる、まさに「家が立つ日」といえる瞬間です。
今回、地域の平屋公民館の建て方を行いました。
この公民館は、地域の集会やイベント、防災拠点としての役割を担う、まさに地域の「心の拠り所」となる施設です。地域の皆様の親世代から、30年も前から計画され始めた公民館建設ともあって、住民の方々からの期待も高まっています。
当日、大工さんたちは汗を拭いながらもきびきびと作業に取り組み、現場には心地よい緊張感と高揚感が漂っていました。途中、突発的な豪雨にも見舞われましたが、大きな問題もなく建て方が無事終了しました。
この記事では、建て方前の準備から当日の様子、そして作業後の余韻まで、現場のことをお伝えしていきます。
どうぞ最後までお付き合いください。
建て方前の準備
基礎工事の完了状況
建て方をスムーズに行うためには、事前の準備が欠かせません。特に重要なのが「基礎工事」です。
公民館は多くの人が集まる場所であり、建物全体の安定性と耐久性が求められるため、基礎部分の施工は慎重に、そして正確に進められました。
今回採用されたのは「ベタ基礎」と呼ばれる工法。これは、地面全体に鉄筋コンクリートの床・スラブを設けることで、建物全体を面で支える強固な基礎です。地震や地盤の沈下にも強く、公共施設には最適な構造といえます。
基礎工事は数週間前に完了しており、すでにコンクリートはしっかりと硬化。レベル(水平)が取れているかのチェックも入念に行われており、建て方を迎えるにふさわしい状態に仕上がっていました。

土台敷と床下断熱の施工について
基礎が完成した後は、「土台敷(どだいしき)」の工程に移ります。
これは、基礎の上に木材(105mm角)を据え付け、建物の骨組みを組み上げるための準備をする作業です。
土台はアンカーボルトでしっかりと固定され、建物の耐震性を高めるための重要な役割を果たします。さらに、防蟻材を土台の木材全体に塗布してシロアリ対策も行いました。
また、今回は床断熱の作業も実施。
弊社では通常の一般住宅建築の際には床断熱ではなく基礎断熱を採用していますが、今回は床断熱。夏や冬にエアコンによる24時間全館空調をおこなうには基礎断熱の方がおすすめですが、今回は用途が公民館だけに、普段から24時間全館空調をおこなうことはないことが見込まれます。集会の時にさっと暖めたい時に有利な床断熱を採用することになった次第です。
断熱材には高性能なスタイロエース(ポリスチレンフォーム)の板材が使われています。快適な室内環境を保つためだけでなく、省エネルギーにもつながる、現代的な建築のスタンダード素材です。
作業は手際よく、しかも丁寧に進められ、現場には「いよいよ建て方だ」という高揚感が少しずつ広がっていきました。


建て方当日の様子
澱みなく作業が進む様子は圧巻!
建て方当日、朝の8時。現場にはすでに大工さんたちが集合し、準備は万端!
木材を吊り上げるためのクレーンもスタンバイし、緊張感も混じった空気の中、作業は始まりました。
棟梁の「始めましょう!」の掛け声後、大工の皆さんが一斉に行動を開始! 柱を立て、梁(はり)をノンストップでかけていく作業は、まさに職人技の連続。重い木材を誤差もなく組み上げていく様子は、見ていて惚れ惚れするほどです。たったの開始数十分で家の形が見え始めるほど、サクサクと作業が進みます。
現場では無駄な動きが一切なく、まさに「澱みなく」という表現がぴったりの、見事なチームワークが光りました。

暑い中でも熱中症に気をつけつつ頑張る大工さん
当日は日差しも強く、気温は30度を超える真夏日となりました。
そのため、作業と並行して熱中症対策も万全に行われていました。現場にはクーラーボックスに入った冷たいスポーツドリンクが用意され、職人たちはこまめに水分補給と休憩を取りながら作業に当たっていました。1時間毎に休憩を挟むなど、「無理はしない」ことを呼びかけ、安全に作業を進められるように気を配り合いました。
それでも、炎天下での作業は体力を消耗します。大工さんたちは汗だくになりながらも、一人ひとりが集中力を切らさず、声を掛け合いながら着実に工程を進めていく姿が印象的でした。
対策の甲斐もあってか、熱中症になる人は出ず、皆無事に一日を乗り切ることができました。

突発的な豪雨でも作業は止まらない!
午後になると、短時間ではありましたが突発的に激しい豪雨に見舞われました。天気予報で覚悟はしてましたが、空模様的に現場では降らないのかな?と思っていた最中、予報通り雨に…
とはいえ通り雨だったのかすぐにやみ、また猛暑に、、
熱中症患者は出なかったものの、急激な天候の変化で皆に疲労の色が見えました。外作業に慣れている職人さんでも猛暑での作業は重労働です。
皆さんも、猛暑日はこまめな水分補給と塩分摂取をしっかりしましょう!!

職人たちのチームワーク
建て方の時はいつも感じるのですが、何よりも感動的なのは、職人さんたちの連携プレーです。
声を掛け合い、時に黙って息を合わせ、各自が自分の役割を全うする姿には、まるで舞台上のパフォーマンスのような美しさがありました。
こうして、突発的な豪雨というアクシデントも乗り越え、建て方作業は予定通り順調に進行していったのです。

建て方を終えて
無事に完了した建て方
夕方5時過ぎ、無事にその日の作業が完了。
朝から始まった建て方は、多少の天候トラブルをものともせず、計画通りの工程で進行しました。建物の骨組みがすっかり立ち上がり、屋根の下地まで組まれたその姿は、「いよいよここに公民館ができるのだ」という実感を地域に与えるには十分なものでした。
大工さんたちの仕事ぶりが随所に表れ、建築の「顔」とも言えるこの工程をしっかりと完了させたことで、今後の工事も安心して進められるという信頼感が高まりました。
地域の人と一緒に簡易的な上棟式
作業完了後には、簡易的ではありましたが、小さな「上棟式(じょうとうしき)」が行われました。
上棟式とは、家の骨組みが完成したことを祝い、建物の無事完成と、そこで暮らす(または利用する)人々の安全を祈願する伝統行事です。
地域の代表者も数名集まり、現場に準備された祭壇に向かって手を合わせる姿が印象的でした。
「図面から想像したより広く感じる」「やっぱり木の建物はいいねぇ」「長年の希望が叶った!」と口々に話していたのが、とても印象に残っています。
このようなひとときは、建物づくりが単なる「物理的な施設の整備」ではなく、人と人とをつなぐ「場づくり」であることを、あらためて感じさせてくれます。

おわりに
今回の建て方は、ただの建築工程の一部ではなく、地域の未来に向けた大きな一歩でした。
公民館という場所は、日常的な集会、子どもたちの遊び場、高齢者の交流の場、そして災害時の避難所として、多くの役割を担う大切な施設です。
その建設のはじまりを地域の人々が見守り、関わることで、この建物は単なる「建物」ではなく「地域の絆の象徴」へと育っていきます。
当日は、気温の暑さや突発的なスコールを除けば、予定通りな建て方となりました。
今後は、屋根工事、外壁、内装、設備の取り付けなど、多くの工程が続きます。完成まではまだ時間がかかりますが、この「建て方」という節目を無事に終えたことは、工事関係者だけでなく地域にとっても大きな励みとなるはずです。
新しい公民館の完成を、そしてその場所で生まれるたくさんの笑顔や出会いを、心から楽しみにしています。